第4章 演習問題解答例
(77) Every man loves a woman.
(1)
(2)
(61) John walks.
(1) John ⇒ … T1(4)
(2) walk ⇒ … T1(1)
(3) John walks ⇒ … T4
= … ラムダ変換
= … 中括弧規約
= … 上下打ち消し
(77) Every man loves a woman.
この文には次の2種類の構文木が存在する.
構文木(a)
構文木(b)
構文木(a)に対する翻訳は次のようになる.
(1) man ⇒ … T1(1)
(2) woman ⇒ … T1(1)
(3) love ⇒ … T1(1)
(4) every man ⇒ … T2(1)
(5) a woman ⇒ … T2(3)
(6) love a woman ⇒ … T5
(7) every man loves a woman
⇒ … T4
= … ラムダ変換
= … 中括弧規約
= … 上下打ち消し
= … 2項述語の表記変換
= … MP4’
= … 中括弧規約
= … 上下打ち消し
= … ラムダ変換
= … 中括弧規約
= … 上下打ち消し
= … ラムダ変換
= … MP3’
= … MP2
= … 上下打ち消し
構文木(b)に対する翻訳は,(6)以降が次のようになる.
(6) him0 ⇒ … T1(8)
(7) love him0 ⇒ … T5
(8) every man loves him0 ⇒ … T4
= … ラムダ変換
= … 中括弧規約
= … 上下打ち消し
= … 2項述語の表記変換
(9) every man loves a woman
⇒ … T14
= … ラムダ変換
= … 中括弧規約
= … 上下打ち消し
= … ラムダ変換
= … MP4’
= … 中括弧規約
= … 上下打ち消し
= … ラムダ変換
= … 中括弧規約
= … 上下打ち消し
= … ラムダ変換
= … MP3’
= … MP2
= … 上下打ち消し
(78) A man or a woman walks.
(79) A man walks or a woman walks.
まず,(78)の翻訳は次のようになる.
(1) man ⇒ … T1(1)
(2) woman ⇒ … T1(1)
(3) love ⇒ … T1(1)
(4) a man ⇒ … T2(3)
(5) a woman ⇒ … T2(3)
(6) a man or a woman ⇒ … T13
(7) a man or a woman walks
⇒ … T4
= … ラムダ変換
= … 中括弧規約
= … 上下打ち消し
次に(79)の翻訳は(1)から(5)を利用して次のようになる.
(8) a man walks ⇒ … T4
= … ラムダ変換
= … 中括弧規約
= … 上下打ち消し
同様にして,
(9) a woman walks ⇒
(10) a man walks or a woman walks
⇒
(80) The man is John.
(81) The man walks.
(82) John walks.
(83) The temperature is ninety.
(84) The temperature rises.
(85) Ninety rises.
(1) man ⇒ … T1(1)
(2) the man ⇒ … T2(2)
(3) John ⇒ … T1(4)
(4) be ⇒ … T1(2)
(5) be John ⇒ … T5
= … ラムダ変換
= … 中括弧規約
= … 上下打ち消し
= … ラムダ変換
= … 中括弧規約
= … 上下打ち消し
= … ラムダ変換
= … 上下打ち消し
(6) The man is John
⇒ … T4
= … ラムダ変換
= … 中括弧規約
= … 上下打ち消し
= … ラムダ変換
(7) The man walks
⇒ … T4
= … ラムダ変換
= … 中括弧規約
= … 上下打ち消し
(8) John walks ⇒ … T4
= … ラムダ変換
= … 中括弧規約
= … 上下打ち消し
同様にして,
(9) The temperature is ninety
⇒
(10) The temperature rises
⇒
(11) Ninety rises
⇒
ここで,(6),(7)はMP2とMP3を使って,次のように書き換えられる.
(6) The man is John
⇒
=
=
この翻訳は男である個体がただ一つ存在して,その個体がJohn()に等しいとき真である.
(7) The man walks
⇒
=
=
PTQでは”the”の翻訳としてRussel流の「確定記述」(definite description)を採用している.この翻訳は,男(man)である唯一の個体が存在し,かつ,その個体が歩く場合に真になるが,世界に男が一人しかいないことを主張しているわけではなく,その発話の状況における唯一性でなければならない.PTQにおける”the”の定義に関する問題については,「白井賢一郎著:形式意味論入門,産業図書,pp.153」を参照されたい.
“the”の翻訳には問題が残っているが,(6)が真であるときこの発話の文脈においてmanである唯一の個体はJohn()である.したがって,(7)の翻訳は次のように書き換えられる.
(7)が真であるならば,が真である.これは(8)の翻訳に等しい.
(8) John walks ⇒
=
=
一方,(10)における名詞”temperature”や自動詞”rise”は,(7)における名詞”man”や自動詞”walk”とは意味的に異なり,一つの時点における個体定項の値,つまり外延を考えるだけでは意味を表現することができないために意味公準MP2,MP3が適用できず,(6),(7)と同じ推論を行うことはできない.
(86) 太郎は花子にその本をやった.